ちょっと長い関係のぶるーす

secondhand books 「六月」のブログ

不思議な懐かしさ

学校行事で、市内唯一の映画館で見てきた。
内装をリニューアルし、トイレも清潔だし、座席の椅子も取り替えてある。シネコンと同じポップコーンの匂いも充満しているが、小屋全体の狭さ、床の傾斜や天井の感じがいかにも「昭和の映画館」。
豊田市内のよい子たちは、みんなここで東映まんがまつりを見て大きくなったんだろう。今のよい子たちは三好のシネコンに行くのだ。

去年のうちにアンケートを取り、これと『ALWAYS三丁目の夕陽』の一騎討ちで洋画が勝利。字幕の漢字が読めないからつまらんという理由で欠席した生徒が数名。

冒頭のシーン、宵闇の中を一台のトラックが走る。
彼方に移動遊園地の電飾がキラキラと美しい。わたしは「移動遊園地の出て来る映画」に弱いのだ。ラスベガスのきらびやかな電飾、街道沿いのドライブインやモーテルのネオンサインでもいい。
『ドク・ハリウッド』とか『イージー・ライダー』とか『レインマン』とか『バグダッド・カフェ』とかだな。
「映画なんて所詮【夢】なんですよ。おとぎ話と同じです」ってわざわざ言うかわりにハリウッドの人たちが使う装置。

小川洋子の無国籍もの(今、わしが考えたジャンル分け)にも出て来なかったか? 『ホテル・アイリス』には出てきた気がする。

2020年の設定だというが、60年代のアメリカっぽい。伝統的ロードムービー、かつ『ロッキー』みたいに単純明快で、わかりやすい。
ハリウッド映画だから「懐かしい感じ」を持ってこられても陰謀の匂いはあんまり感じない。
『ALWAYS』をはじめとする貧しくてもみんな頑張ってた時代を賛美(ほんとかよ?!)してるような絵はうさんくさくて困る。現実から目をそらさせ、過去を懐かしがらせようなんて陰謀に決まっている。

何せ今年に入って『恋の罪』『ヒミズ』と園子温率100%だったので、ここいらでわかりやすい映画を注入しておかないとヤられてしまう。何にヤられるかは、知らんが。

午前中、景気付けに『ロボジー』も見て来たし……。ロボット2連発。アトム世代上等だ。

移動遊園地。
子どもの頃住んでいた牛久保の夜店を思い出す。
毎年、豊橋は6月、牛久保は7月。毎週土曜日の夜、常盤通りに夜店が出た。
他に娯楽がなかったから、そういう時代だったから、まあ、とにかく夜店はすごい人手でにぎわっていたのだ。お祭りでもないのに夜店が出るのだ。
日曜白昼の歩行者天国ではない、毎週土曜の夜、一か月間の夜店。

あんな夜店は二度と復活しないだろう、と思うと、アメリカ映画の移動遊園地に弱い理由はこれか、と今わかった。