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secondhand books 「六月」のブログ

皇帝のいない八月

ドラマ「VIVANT」で注目、謎多き陸自部隊「別班」 元班員の証言報道、政府は存在否定:中日新聞Web
TBS系、こちらではCBC「VIVANT」この枠で堺雅人主演にハズレなし。
どうやら自衛隊の特殊部隊の存在が注目されているらしい。

自衛官だった亡父は万年一尉で退職前にお情けで三佐に昇進したが「出世できなかったのは北海道に行ってないからだ」ということにして、自分の能力や人望は役職以上だったと言いたかったらしい。わしが姫路で生まれ京都長池に越し、中学を出るまで豊川にいたのはまあ駐屯地のある場所を転々としていたわけなんですよ。

さて『皇帝のいない八月』山本薩夫・78年。大学3年の夏休み、今は亡き南部食堂だったか、下の喫茶ナンブ?(名前忘れた)だったような気もするがこんな会話を聞いた。
「面接、オレ落ちたかも」
「なんで?」
「趣味は映画鑑賞で〜どんな映画見てますかっていうから〜社会派ですかねえ、最近は山本薩夫監督の『皇帝のいない八月』が面白かったですって言っちゃって、社会派ってまずいかな」云々。
ふうん、そうなんだあ。
で自分も見に行ってみた。

民青が大好きそうな『若者たち』の山本圭が大人になって映画の狂言回しみたいに出ずっぱり。長崎駅で呼び止められた怪しい男たちに「その安全靴、自衛官の方ですよね」っていうセリフだけをよ〜く覚えている。
自衛隊の血の気の多い輩がクーデターを企てて「武力鎮圧」されてみんな殺されて終わる映画だ。クーデター部隊が国鉄寝台特急さくらを乗っ取る鉄道パニックものでもあり、ソフィア・ローレン主演の『カサンドラ・クロス』と比較されたりもした。
当時のわしの感想は「武力鎮圧って権力者が反逆者を皆殺しにしちゃっていいんだ」「社会派ってこういうことか」だった。権力者、あな恐ろしや。

今回BSプレミアムで見直して、安全靴を履いていた2人組のうちの一人がヒョロヒョロに痩せた風間杜夫だったこととか、いつ見ても妖艶な太地貴和子とか、BSではよく見る三國連太郎佐分利信だけじゃなく滝沢修とか鈴木瑞穂とか内藤武敏とか久しぶりな俳優に会えてよかったです。
シベリア鉄道ソ連に行ってそいで帰還した岡田嘉子渥美清も出演させて、彼らは殺されずに保護されるのは観客サービスだったのかな。岡田嘉子渥美清だけじゃなくそこそこに生存者がいるのに、ただの「脱線事故」で処理できんのか? こんなに死人を出しといて。

それからそれからクーデターの首謀者が髪が薄くなる前の渡瀬恒彦で実に男前。自衛隊特殊部隊を管理する上官がまだまだ若い三國連太郎。その娘役の吉永小百合(当時33歳)が夏の着物を着て日傘をさして登場。特急さくらに乗る時は白いワンピースに着替えるのだが、これがまあ何を着せても息を飲むほどに美しくて驚いた。もともと女優になるために生まれてきた吉永小百合だが、こんなにキレイだったっけ? って思ってしまったさ。
あれ? NHKは「八月」つながりじゃなく、民間企業松竹映画なんとか母さん宣伝の片棒担ぎで、この夏にコレ流したのか。知らんけど。

WIkiでこの映画を調べると最初は渡哲也を使いたかったが石原プロがOKしなかったので弟にしたとか、そもそも協力を拒んだ国鉄だが、特急さくらを爆発炎上させたことで国鉄、本気で激怒して今後一切映画制作には協力しないと表明したとか、笑えることがいっぱい書いてあって面白かった。国鉄がJRになってその後どうなった? 知らんけど。