ちょっと長い関係のぶるーす

secondhand books 「六月」のブログ

ビニール信仰

昭和40年代、いわゆる60年代から70年代にかけて発行された単行本にやたらビニールカバーがかかっている問題。

リアルタイムでその時期に本を買った時にビニールカバーがかかっていて汚れないし、なんか高級感があって嬉しいと思った覚えがある。ビニール、プラスチックという未知の素材への信仰に近い崇拝があったとしか思えない。

それと最も重要な要因は再版制度である。
書店は売れなかった本を取次に返品が可能。版元はカバーを替えるなり、表紙を磨くなどの化粧直し後、あらためて書店に卸す。そのためには本は常にキレイでなければならない、のであった。

あれから50年。世界規模でプラスチックは地球の敵に認定された。
ビニールって縮むし、硬化劣化が激しく、ひどい状態。上製本でない限り、表紙が歪んでしまうので本の雑誌社から出ていたペーパーバックのなんとかシリーズは数年前にカバーを剥いた。

商品として、発売された時のままであることにこだわる人は多いが、これではあまりにも本が可哀想。

というわけで中央公論社『日本の詩歌』シリーズ全31巻。入荷しておりますが、ビニールカバーは全部捨てました。バリバリと音が致しました。

この全体を藤色でまとめたセンスは一体誰が?
と思うほど甘く素晴らしい装丁。脚注の文字のインクまでが、この薄紫色なんですぞ。