ちょっと長い関係のぶるーす

secondhand books 「六月」のブログ

詩人茨木のり子の会で岩瀬文庫へ

詩人茨木のりこの没後『清冽』というタイトルで評伝を出したノンフィクション作家後藤正治氏の講演を聞きに西尾市岩瀬文庫へ行く。

岩瀬文庫では2015年12月から「茨木のり子とふるさと西尾」と題した企画展を開催中であったが、締めくくりイベントが後藤氏の講演会であった。

わしは後藤氏が西宮にある定時制高校をテーマにして書いた『リターン・マッチ』に深く感銘を受けており、ノンフィクション作家としては彼と『日本海イカ』の足立倫行くらいしか認めていない。

講演の内容は『清冽』を読んでいただくとして、全然関係ないが結構大事なことにふと気づいた。
去年の夏に同じく茨木のり子をテーマに元NHKアナウンサーの山根基世氏の講演も聞いた。山根氏はしゃべりのプロだから、ということは置いといて、講演や研究発表にやたらパワーポイントを使うのはいかがなものかということだ。

若いヤツらは、パワポ使ってなんぼ、と思ってないか?
わしら年寄りを「パワポも使えない」とバカにしてないか? おまえら。
言っちゃあなんだが、わしはパワポは使えます。使ってみて、こりゃあかん、と思ったから使わないのだ。

わしはジョブズじゃないから商売としてのプレゼンとかはやらない。ただ大勢の皆さんの前でお話をする時、皆さんが勉強熱心な方で「せっかくだからメモをとりたい」とお考えの場合、パワーポイントのために照明を暗くされたのでは迷惑ではないか?

茨木のり子について語るのに、まあ、パワポはいらんわな。山根さんの時は受付で引用される詩のプリントも配られていたし……。

というわけで、今回、ちゃんとメモをとりながらお話を聞いたわしである。
耳から入ってくる言葉をいろいろ脳内の別の情報に結びつけてノートに記す。これは結構いい訓練になる。今まで気づいてなかったのか? いやもう最近、研修会とか行かされても照明暗くてメモ取る気になれんのさ。
そう、パワポってのは、自分の手でノートに字を書かずに、録音や録画で記録を残そうとする人々のための道具なのだ。

『オデッセイ』でマットデイモンが火星での四苦八苦の記録を残すために、カメラの前で一人語りする。あんなこと、わしらはようせんわ。電源喪失したら、全部パーじゃないか。紙と鉛筆にまさる記録装置はないわい。
ターミネーター』の終わりの方でも、女優が車内でマイクに向かってなんかしゃべっている。やがて生まれる息子のために何かを残そうとしてるんだっけか。カセットテープで。
思いついたことをしゃべって残せた方が楽だって思う人もいるのか? あとでそれを聞くのはとても面倒じゃないだろうか?
A4の紙1枚分の情報量を耳から聞こうとすると5分以上かかるぞ。書かれたものを目で見るか、読むなら1分以内だ。奴等はバカなの?

パワポを使って発表しないとダメなヤツだと思われそうって若い人が思い込んでいるとしたら、気の毒なことだ。

あんなもんはプロジェクター屋さんの陰謀だよ。
大事なことは見栄えのいいパワポを作ることではなく、話の内容の何倍も勉強して、ゆっくりとわかりやすく話せるように準備することだよ。